吉野弘「贈るうた」より“祝婚歌”

山形は酒田市出身の詩人「吉野弘」さんが亡くなった。詩集「贈るうた」の中の“祝婚歌”はあまりにも有名な詩だ。わたしも披露宴の中で読ませていただいたこともある。結婚式のお祝いのメッセージとしても紹介されたり、地元庄内の、琢成小学校、泉小学校に遊佐中学校、そして上山明新館高校の校歌も作詞されている。また、浜田省吾の「悲しみは雪のように」は吉野氏の「雪の日に」をもとに作られたという。
【祝婚歌】

二人が睦まじくいるためには 愚かであるほうがいい 立派すぎないほうがいい 立派すぎることは

長持ちしないことだと 気付いているほうがいい 完璧をめざさないほうがいい 完璧なんて不自然なことだと うそぶいているほうがいい 二人のうちどちらかが ふざけているほうがいい ずっこけているほうがいい 互いに非難することがあっても 非難できる資格が自分にあったかどうか あとで 疑わしくなるほうがいい 正しいことを言うときは 少しひかえめにするほうがいい 正しいことを言うときは 相手を傷つけやすいものだと 気付いているほうがいい 立派でありたいとか 正しくありたいとかいう 無理な緊張には 色目を使わず ゆったり ゆたかに 光を浴びているほうがいい 健康で 風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに ふと 胸が熱くなる そんな日があってもいい そして なぜ胸が熱くなるのか 黙っていても 二人にはわかるのであってほしい